歯内療法実習用模型歯とは、根管治療をはじめとする歯内療法の基本操作を学ぶために使用される、教育・実習用の歯科模型である。実際の歯に近い形態や内部構造を模倣することで、学生や研修者が安全かつ効率的に技術を習得できるように設計されている。
基本構造
歯内療法実習用の模型歯は、以下のような構造を備えているのが一般的である:
歯冠部:天然歯のエナメル質や象牙質を模した硬さの異なる樹脂で形成され、切削感の再現が可能。
歯髄腔:中央に設けられた空洞で、アクセスキャビティ形成や歯髄除去の練習に使用される。
根管:1〜3本の根管を内部に備え、湾曲や枝分かれを再現しているものもある。根管形成や根充のトレーニングが可能。
根尖部:根尖孔を設け、根管長測定や到達確認の練習ができる。
透明型・切断型モデル:内部の構造が可視化されるものや、縦断面で観察できるモデルも存在し、構造理解を深めるのに適している。
使用目的
歯内療法実習用模型歯は、以下の目的で活用されている:
基礎的手技の習得
根管へのアプローチ方法、拡大形成、洗浄、乾燥、根管充填といった基本操作を、安全な環境で繰り返し練習できる。
解剖学的構造の理解
透明モデルなどを用いることで、根管の数や走行、分岐、湾曲などを視覚的に学び、実臨床への応用力を高める。
器具操作の感覚トレーニング
ファイルやリーマーの操作角度、圧力、挿入深度などを体感的に習得し、器具破折や根管損傷のリスクを軽減する。
客観的な評価と指導
標準化された模型歯を使用することで、教員が学生の技術を公平に評価しやすく、フィードバックが的確になる。
まとめ
歯内療法実習用模型歯は、臨床に入る前の学生にとって、技術と知識をつなぐ重要な橋渡しとなる教育ツールである。繰り返し練習ができること、構造を可視化できること、安全性が高いことなどから、実習における学習効果を飛躍的に高める役割を担っている。今後も技術革新に伴い、よりリアルな操作感や評価機能を持った模型の導入が進むことが期待される。